2008年3月29日土曜日

民事再生法はテロだ

先日深夜、当社の取引会社がインターネットで情報を公開した。その内容というのは、取引会社が、その日、取締役会にて民事再生手続開始申し立てを行うことを決議し、同日所轄裁判所に受理されたこと。その結果、弁済禁止の保全処分の発令を受けたので、カクカクシカジカのお知らせいたします、ということだった。それと、もう一つ民事再生手続開始の申し立てを行ったことから、取引会社に対する債権について取立不能又は取立遅延のおそれが生じましたのでお知らせいたします。そんな内容が、突然、インターネットで流され、翌日の新聞に電撃的に発表された。この手の情報公開は、昼間を避けて深夜にやることが多いらしい。夜陰に乗じる? おかしいぞ、こんな情報公開こそ、白昼堂々とやってくれ。

翌日早速、当社に事業資金の融資をして頂いている金融機関の担当者から、内容確認の電話があった。私には、寝耳に水の話だったので、これから正確な情報を入手して報告します、また当社と取引会社との債権債務についてもまとめて報告しますから、しばらくお待ちください、と言って受話器を置いた。早速、帳簿、契約書をチェックした。調査の結果、当社と取引会社との債権債務は、当社の主要事業にはさほど影響はないことが判明した。取引会社と当社の関係を知っている人には、心配をかけてしまった。友人が気になって電話をくれる。何人かの友人には、余分な気を遣わせてしまった。持つべきものは、友人だ。

民事再生はテロですよ。

懇意にしてくれている金融機関の担当者は、私が少し内容を話しただけで、テロですよ、なんて言葉を発して私を驚かした。それではこの際、テロについて学術的?な知識も、今後必要になるだろうから、ここで一つ学習してみることにしますか。

テロの語源をインターネットで調べた。テロリズムの語源は、フランス革命末期のロベスピエールの恐怖政治の「terrerur、テロール、恐怖」よりきている、とある。それでは、テロの定義はどうかというと、日本の国内においてもいくつかの法令でテロリズムに関する規定を設けている。自衛隊法81条の2第1項では、「政治上その他の主義主張に基づき、国家若しくは他人にこれを強要し、又は社会に不安若しくは恐怖を与える目的で多数の人を殺傷し、又は重要な施設その他の物を破壊する行為」とある。不特定多数の個人間、あるいは社会に介在する「合意」に対して物理力やある種の表現をもって介入し、衝撃を与えることで混乱や狼狽を誘い、結果として明示的なり暗示的なりに拘束されてきた合意事項を破綻させることを目的とする。生命や財産の継続性は社会契約の前提であり、これを遮断することによって合意の継続を困難にする手法である。

インターネットによる学習はここまでにして、ここからは当社担当の金融機関の人の話に戻ろう。事業資金を融資している会社とは、コミュニケーションを密にしていると、その会社の内容が苦もなく分かるものなのです。事務所の中が、まず埃っぽくなる。清掃が行き届かなくなる。社長と連絡が取れにくくなる。社員の意気が上がらない、社員の口からは会社の批判や社長に対する悪口が漏れる。社長は、世間や役所や銀行に対して愚痴っぽくなる。そして怒りっぽくなる。そういう状態になると、金融機関は貸付金の回収に比重がかかってきて、事業は先細りの一途をたどり、結果的に息の根が絶えるのです。これが、企業の事業や財務状況が悪化していく一般的なプロセスです。金融機関に働いて居る者には、これが普通の貸し手と借り手の関係なのです。でも、民事再生はちょっと違うのです。

民事再生手続き開始の申し立ては、社員も知らないうちに行われることがよくあるのです。取締役会が開かれ、そこで決議され、限られた社員だけが秘密裏に書類の作成に入るのです。担当役員と限られた社員だけが、担当弁護士事務所に缶詰になって書類を作成する。会社は、いつもと変わらない状態で業務がこなされていく。危機的な状況にあるなんて雰囲気は、これっぽっちも匂わせない。あくまでも、平静に安穏な時間が過ぎていく。対外的には当然、社内的にも一切情報は一滴も漏らさない。そして、予定した日時に、ドカーンとくるのです。取引会社に何の相談もなく、藪から棒だ。平和な市民社会を、瞬時にパニック状態におとしめる、テロだ。取引会社の都合なんて、何の斟酌(しんしゃく)もなく。これこそ、テロですよと主張する金融機関の担当者の言辞は全く当を得ているように思うのは、私だけだろうか。

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