2008年10月17日金曜日

世界同時、経済不況

最近のアメリカ経済の狼狽、困惑、苦痛ぶりが短い文章でまとめられている記事を転載させていただいた。世界経済が同時にこれほどまでになった情況は、私にとっても初めての経験だ。後日のために、何かのためになるのではと思いついたので、この記事を転載させていただいた。転載にモタモタしているうちに、世界経済の実態はますます、すさまじく転落しつつある。その動乱振りを後ろの方に書き足した。

その後の世界経済の動きを書き加えています。

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(081010)

朝日朝刊・経済

経済気象台

ウォール街の徒労と絶望

(山人)

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9月下旬から10月初旬まで、金融危機に揺れるニューヨークとワシントンに滞在した。ちょうど、経済不振に陥っていた金融機関の接収・譲渡、7千億ドルの政府資金導入を含む金融救済法の当初案の否決、株価の暴落、金融市場の機能まひなど、米国の金融システムが大きく変転している時期だった。

エコノミストや当局関係者の多くが、徒労感を強くにじませていた。金融機関の脆弱性に対する相互不信の高まり、連銀の大量の流動性供給にもかかわらずしつこく残る信用収縮圧力、公的資金投入に対する国民の強い批判など、さまざまな手立てを迅速に講じてきたにもかかわらず、期待したような事態の改善がみられないことに対する疲労感、不安感を、彼等との議論の中で強く感じた。

しかし、バブル崩壊後の日本の金融危機を経験した人間からみると、米国人の感覚はまだ甘い。

皆の目が金融市場に釘付けにされている間も、経済は着実に悪化している。住宅市場の縮小、住宅価額の下落は続いており、下げ止まるとしても、それはまだ先の話だ。雇用者数は9ヶ月連続で減少し、個人消費も冷え込みが顕著だ。家計の過大債務の削減が加速すれば、米国経済はさらに悪化するだろう。頼みの輸出にも、世界経済減速の影響が及びつつある。

そこに信用収縮の悪影響が加われば、経済はさらに悪化するだろう。そして、景気後退は新たな不良債権を生み、金融システムは一段と脆弱化してゆく。つまり10年前の日本で起きたような金融危機と経済危機の悪循環が深まる可能性がある。

米国経済の低迷は、深く長いものになるだろう。それは日本経済にとっても、停滞が予想以上に長引くことを意味する。

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*9月15日、米証券大手リーマン・ブラザーズ倒産。

*15日、メリルリンチが米銀大手バンク・オブ・アメリカに身売り。

*経営難で米政府当局の管理下に入ったAIGはアリコを売却する方針を明らかにした。

*米証券1位のゴールドマン・サックスと同2位のモルガン・スタンレーが銀行に衣替え。

*米銀行大手6位ノワコビアと同7位のウェルズ・ファーゴは合併することで合意した。

*9日のニューヨーク株式市場は、ダウ工業株平均の終値が前日比678,91ドル安の8579,19ドルになり過去3番目の下げ幅を記録した。終値では03年6月末以来の9000ドル割れで、同年5月以来約5年6ヶ月ぶりの安値をつけた。

*10日、ニューヨーク株式市場は、ダウ工業株平均が、一時8000ドルを割った。

*世界の株式市場の時価総額は、9月からの1ヶ月余りで1400兆円が吹き飛んだことになる。

*東証に上場する不動産投資信託(リート)「ニューシティ・レジデンス投資法人」が9日、民事再生法の適用を東京地裁に申請した。

*10日、中堅生保の大和(やまと)生命が自力再建を断念して更生特例法の申請を東京地裁に申請した。

*10日午前の東京株式市場で日経平均株価が一時100円超暴落し、8000円割れ寸前に迫った。

*10日、ワシントンで開かれる主要七カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)で、世界的に動揺を続ける金融システムを安定化するには、公的資金による金融機関への資本注入が欠かせないとの認識で合意した。協調利下げ。

*アイスランドは財政が悪化して主要国内銀行を国有化、ロシアに約5400億円の支援を要請した。

*金融危機がスポーツ界にも大悪影響。ロンドン五輪選手村建設、F1、イングランド・サッカー界、米プロバスケットボール協会、米フットボールロー グ、米大リーグ

*政府与党は10日、地方銀行など地域金融機関に公的資金を予防的に資本注入する為の法律を検討し始めた。

*米国。金融機関への資本注入や住宅ローン資産の購入に使える最大7千億ドル(約70兆円)買取制度が本格的始動。

*公的資金の注入は、米国に始まって英、アイルランド、ドイツ。

*欧州連合(ユーロ圏)は、公的資金注入と、政府保証の付与を通じた銀行間取引市場の活性化対策を練る。

*英国、アイルランド、ドイツ、スペイン、ギリシャ、ニュージーランド・オーストラリアで銀行救済基金、個人預金全額保護。

*15日のニューヨーク株式市場では、ダウ工業株平均は一時、前日終値より391,39ドル安の8919,60ドルまで下げ、取引途中では2日ぶりに9000ドルを割り込んだ。

*16日、東証また暴落1089円台。日経平均の終値は、8458円45銭。

*08年度の上場企業倒産は16日までに23社に達した。戦後最多のペースで進んでいる。

*米自動車大手ゼネラル・モーターズの経営不安が表面化。

*16日、シンガポールとマレーシアの政府・中央銀行は国内のすべての預金を保護すると発表した。

*国際通貨基金は、金融危機で財政難に陥った中小国や新興国への緊急融資制度の貸付上限を撤廃した。

*アイスランドに国際通貨基金を中心にした約6千億円の緊急融資を受け入れた。

*スウェーデン政府は、約21兆円規模の国内金融安定化策を発表した。

*中国の7~9月の国内総生産・実質成長率は前年同期比9,0%だった。

*10月23日の東京外国為替市場の円相場は大幅続伸した。1ユーロ=123円 1ドル=96円

*23日の東京株式市場は、日経平均株価の下げ幅は一時600円台を超え、年初来安値を更新した。8000円台割れ寸前まできた。終値は8195円74銭。

*24日の東京株式市場の日経平均株価が、03年5月以来約5年5ヶ月ぶりに8000円台を割り込んだ。終値は7649円だった。

*24日のニューヨーク株式市場の終値は、03年4月以来の約5年半ぶりの安値をつけた。ダウ工業株平均の終値は8378,95ドル。前日比312,30ドル安だった。

*27日の東京株式市場は、世界的な景気減速と急激な円高による企業業績の悪化に対する懸念が高まり、日経平均株価は急落。03年4月末につけたバブル後最安値〈7607円〉を大幅に下回った。終値は7162円90銭。

*28日、東京株式市場の日経平均株価は、1982年10月以来、約26年ぶりに7000円台を割り込んだ。午後の取引では買い戻された。終値は、前日終値より459円02銭高の7621円92銭。

*31日、日本銀行は金融政策決定会合で政策金利の誘導目標(無担保コール翌日物)を現在の年0,5%から0,2%幅引き下げ、0,3%前後とすることを決めた。

 

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(081011)

朝日朝刊

株価暴落/不安の連鎖を断ち切れ

社説

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株価暴落の世界的な連鎖が止まらない。きのうの東京では日経平均株価が一時1000円以上も安くなり、バブル後の最安値7607円まであと500円ほどに迫った。7日間の取引で3000円以上も下落した。

主要国のなかでも、日本株の落ち込みが激しい。6年余りの景気回復を支えた日本経済の強みと、陰で温存された弱みが同時に売られている。

強みは輸出だった。しかし、一時1ドル=97円台に突入する円高と世界不況による業績悪化の予想で、自動車や電機など主力株が売り込まれた。

弱みは、証券市場が海外からの投資に頼りすぎていたことだ。欧米の投資家は金融危機を受け、海外での資金運用を縮小し引き揚げている。そのあおりを東京がもろに受けた。

株と同時に外資依存で膨張してきた不動産市場でも収縮が止まらず、上場されている不動産投資信託(Jリート)が初めて破綻した。さらに、このリートや米国のハイリスク金融商品での資産運用が多かった中堅生保の大和生命が破綻に追い込まれた。高利回りの保険で資金を集め、高リスクで運用する無理な経営が、金融危機に直撃された。

日本の金融機関は傷が浅いから大丈夫。日本は金融危機の経験者として、対応策を外国へ伝授する役だ。これまでそう思いがちだったが、足元から火が噴出した。不意を突かれた株式市場は不安感が頂点に達している。

政府・金融機関は、まず不安の連鎖と増幅に歯止めをかけるよう、全力をあげなければならない。

大和生命の破綻は特殊なケースではあるが、株安がさらに進めば、苦境に陥る金融機関がでるかもしれない。当局は金融機関の経営内容を、いまいちど総点検をしてほしい。

同時に、破綻に備えて安全網を整備し直さないといけない。中小金融機関へ公的資金を注入するための「金融機関強化法」は、今年3月に期限が切れ失効している。生保への公的支援制度も来春で切れる。

これらの復活・延長などを盛り込んだ対応策を、自民、民主両党が検討している。地方経済の不振もあって、経営が苦しくなってきた中小金融機関もある。取るべき対策を総まとめにして早急に実現させるべきだ。

主要七カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)が開かれる。金融機関に対する主要国首脳会議(G8サミット)の開催も検討されている。日本はサミットの議長国として国際協調を主導しなければならない。

また、日本の主要企業にも注文したい。たしかに世界不況は逆風だが、これまでの好況でため込んだ蓄積も各企業にはある。逆境のときこそ、それを次の成長のために使ってほしい。

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