20101013の朝日・夕刊12面に載っていた写真を見て、ありふれた表現だけれど、ガ~ンと頭をバットで殴られたような衝撃を受けた。これは、何じゃ、片足でサッカーをしている!! 目が紙面に釘付けになった。体の血が騒いだ。目が充血してくるのを感じた。
サッカーは、人間をこんなにも勇敢にさせるものだと、改めて感動させられた。サッカーという競技には、先天的にどこまでもチャレンジという因子が埋め込まれているいるようだ。
(ボールを追う主将の新井誠治さん(左)とエンヒキ・松茂良・ジアスさん=埼玉県朝霞市溝沼、福岡亜純氏撮影)
私は、高校1年の時から、素浪人時代の2年間の休みはあるものの、大学の4年間、卒業後も同好の仲間とサッカーを楽しみ、また地元自治会に請われて子どもサッカー教室で指導した。そのように、私のサッカーは繁忙だった。サッカーだけなんです、唯一の趣味として愛して止まなかったのは。62歳になった今でも、プレーはできないものの、サッカーの話題は、いつでも、何でもウエルカムちゃんだ。
そんなサッカー狂の私が、その都度恥ずかしい思いをしてきたことがある。体の状態に応じて、趣向を凝らし、工夫して、「新作サッカー」を幾種類も編み出して、各地でそれぞれに勤(いそ)しんでいる人がいることに、余りにも無知だった。ハンディを乗り越えるなんて、そんな甘いもんじゃない。新作サッカーを作り上げ、これを究(極)〈きわ〉めようと努力する多くの人たちがいることを。
本質的に面白いサッカーだからこそ、どんなに、姿や形を変えても興味は果てしない。競技ごとに考え出されたルールは厳然と守る。手を使わない、手を使えない、この原則のもどかしさの中で、技を競う。競って進化する。
先ずは女子サッカーだ。私が大学の現役の頃、今から42~3年前、女子サッカーなど誰もやっている人はいなかった。当時、誰が今日の女子サッカーの人気の高まりを想像し得ただろうか。約20年前、地元自治会の体育部の中にできた子どもサッカー教室には、女の子もちらほら混ざっていた。私の娘も男の子に混じってプレーした。そうこうしているうちに女子サッカーがますます盛んになって、今、なでしこジャパンと呼ばれる日本代表チームの戦績は立派だ。世界のトップクラスに位置する。海外のプロチームに籍を置いているプレーヤーもいる。
それから、映画「プライド in ブルー」で初めて知った、知的障害者たちによるもう一つのW杯。2006年のドイツW杯に合わせて行なわれた大会の記録映画を観るまでは、このような大会があることを知らなかった。娘と一緒に映画を観たのは2007年の夏、テアトル新宿だった。この映画を観て直ぐに、私の勤める会社の入口付近に、寄付をお願いするための募金壷を用意した。少しでもこの大会に協力したいと思ったのです。
そして、視覚障害者たちによる、もう一つのW杯なんて言わせないぞの「ブラインドサッカー」にも驚かされた。アイマスクを付けて音の鳴るボールでプレーするフットサルだ。今では、健常者も混ざってプレーを楽しんでいる。健常者だって、アイマスクを付ければ条件は同じだ。テレビで放映されたのを偶然見たことがあるのですが、どうしてあんなに上手くボールを運べるか、不思議でもあった。
そして、今回のこの新聞記事だ。読む前に、写真を見て吃驚した。
なんと、「アンプティサッカー」というやつだ。
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これからは新聞記事そのままです。
片足片手 勇気くれたサッカー
「アンプティサッカー」日本代表19人W杯へ
つえをつきながら片足の選手がピッチを走り、片腕のキーパーがゴールを守る。「アンプティサッカー」は病気や事故で片足、片手を失った人たちがプレーする。アルゼンチンで開かれるワールドカップ(W杯)に初出場するため、「日本代表」10人が13日午後、成田空港から出発する。(牧内昇平)
10日、埼玉県朝霞市のフットサル場。チームを二つに分けたミニゲームがあった。ゴール前。ジャパンブルーのユニホームを着たDFで主将の新井誠治さん(40)は、右足でジャンプして体の向きを変えた。MFの日系三世、エンヒキ・松茂良(まつもら)・ジアスさん(21)は2本のつえで体を支えながらドリブル。左足を振り抜くとボールはゴール右上に突き刺さった。新井さんは悔しそうに大の字になって倒れ込み、一息つくと笑顔で言った。「一対一の緊張感。柔道をしていたころを思い出します」
新井さんは埼玉県川口市に住み、損害保険関連会社に勤める。30代前半まで実業団の柔道選手だった。左足を失ったのは2005年3月、ひざに腫瘍ができ、付け根から切断した。原因は血液のがん、悪性リンパ腫。がんは内臓に転移し、同年夏、臍帯血移植が成功し一命を取り留めた。
再発の可能性がほぼなくなって数年。リハビリを兼ねた水泳やアーチェリーでは満足できなくなり、「もっと激しいスポーツがしたい」という思いが膨らんだ。
新井さんが義足を外し、恐る恐るボールを蹴り始めたのは4月。知人から、アンプテイサッカーの元ブラジル代表選手の松茂良さんを紹介されたのがきっかけだ。
最初はつえを握る手の皮がぺろんとむけたが、「全身を思い切り使う感覚がよかった」と新井さん。試合に出るにはキーパーを含めて7人が必要だ。メンバーを探し、関東などに住む20~49歳の10人が集まった。国内にはほかにチームが見当たらず、そのままW杯代表になった。
16歳の時、骨肉腫で右足を失ったDFの上中進太郎さん(36)=東京都府中市=は「サッカーがめちゃめちゃ好き。できないとあきらめていた」。キーパーの前田和哉さん(24)=茨城県神栖市=は昨年6月、労災事故で右ひじから下を切断した。「プレーしていると、勇気をもらえるんです」と話す。
W杯は17日(日本時間)開幕。ブラジル、イングランド、ガーナなど18カ国が参加する。日本の初戦は開幕試合で相手は強豪アルゼンチン。新井さんは「心を奮い立たせるものに出会えた喜びを、障害ある人に伝えたい」と健闘を誓う。
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アンプティサッカー
「アンプティ」は英語で「切断で手足失った人」の意味。義足を外した選手がつえ2本を使って片足でプレー。つえでボールをコントロールすると反則になる。キーパーは片腕の人が務める。ピッチは通常のサッカーの約3分の2の広さ。試合は25分ハーフ。1980年代に米国で始まった。国際アンプティサッカー連盟が開催するW杯は今回で8回目。パラリンピックの正式種目を目指している。
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