(080710)・朝日朝刊・社説
数字は一夜で消えたが
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地球温暖化を引き起こす二酸化炭素など、温室効果ガスの排出をどう減らすか。その流れをつくることが求められていた洞爺湖サミットが、幕を閉じた。
残念ながら、主要排出国が一緒になって数値目標の入った旗を立てることはできなかった。主要8カ国〔G8〕に中国やインドなどが加わった16カ国の首脳会合で、先進国と新興国の歩調が合わなかった。
前日に発表されたG8首脳の文書では、世界全体の排出量を「50年までに半減」させるという長期目標を国連の気候変動枠組み条約のもとで採択するよう求めていた。
先進国だけではなく、より広い枠組みで国際目標にしようと呼びかけたのである。腰が引き気味だった米国を引き込み、先進国が声をそろえたのは一歩前進だった。
ところが一夜明けて、枠を新興国に広げてみると「50年までに半減」という数字は消えてしまった。新興国側は、経済成長が制約されかねないという懸念をぬぐえなかったのだろう。先進国側が率先して大幅削減を引き受ける姿勢を示せなかったのが大きい。
ただ、16カ国首脳会合の宣言は、気候変動枠組み条約のもとでの交渉で「世界全体の長期目標を採択することが望ましい」とまでは歩み寄っている。これを足がかりに議論を先に進めるしかあるまい。
現役世代が責任もってかかわれるここ10~20年でどれだけ排出量を減らすか。排出量の増大傾向をいつ減少に転じさせるか。これらについてもG8や16カ国首脳の会合は目標を詰められなかった。
脱温暖化の決意を数字で表すという点では、めずらしい成果があったとは言い難い。だが、そんななかで期待がもてる変化は見えてきた。
一つは、先進国が「野心的な中期の国別総量目標」を掲げると明言したことだ。もう一つは、新興国の側も野放図に排出量を増やさないようにブレーキを踏む責任を、条件付きながら引き受けたことだ。
16カ国首脳の宣言はもって回った表現になっているが、技術や融資などの支援を前提に新興国側も国ごとに適切な行動をとるとしている。
先進国も新興国も、負担を一方的にかぶらないよう警戒しつつ、同じ方向をむいて動き出したように見える。この流れを強めていくことが大切だ。
京都議定書が12年に終わった後の排出削減の国際枠組みは、気候変動枠組み条約の締約国会議が09年までにつくる予定だ。その枠組みでは中国などの新興国も何らかの形で責任を負ってもらわなくてはならない。
今回芽生えた流れをどう肉付けするか。次の難題が待ち構えている。
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