鳩山前首相が、菅首相に対してこの代表選においては挙党態勢を作るよう託していた。とりわけ強く迫っていた。菅首相を応援すると言っていた。ところが、この挙党態勢というのが、実は鳩山氏の勝手気ままなもので、自分が政治家を辞めると言ったけれども、それは皆さんには忘れてもらって、何とか自分の居場所=地位を確保して、組織に留まりたい、そして、ダブル辞任した小沢一郎前幹事長にも、しかるべき地位を用意してやってくださいな、そして、憎きアイツ、仙石官房長官と枝野幹事長を辞めさせてくれないか、こんなことが鳩山氏の求める挙党態勢だったようだ。この挙党態勢に沿ってくれるならば、自分は菅首相を応援するが、どうだろうか、と菅首相に持ち込んだ。そんな話は受けられないと菅首相は断った。
菅首相がそのような考えならば、自由党を民主党に吸収した時のいきさつから、鳩山氏は小沢氏を応援する大義があると方向転換した。菅首相ではなく、小沢氏を応援する、と大変身したのだ。合併したのは2003年のこと、この場に及んでそんなことを理由に挙げた。そして、昨日(28日)、民主党が自民党に代わって政権がとれて、自分が首相になれたのは、小沢氏の貢献によるもので、その恩に報いたい、なんて、中国かロシアで記者に語ったそうだ。
この定見のない前首相に、バカか、と怒鳴ってやりたい衝動に駆られる。民意をよく理解していない。鳩山氏と小沢氏は、そろって3ヶ月前に、政治とカネの問題で首相と幹事長職を辞した。鳩山氏はその時、政界から引退すると発言した。両氏は、どこまで破廉恥なのだろう。政策論争も糞もないのだ、人事と絡めて、自分たちの権力の温存しか念頭にない。
鳩山氏は、民主党が割れることだけが怖いだけ。民意というか国民の声には馬耳東風、自分の首相としての失政の責任なんて露ほども感じてない。この大バカ者め。
両候補には大いに政策論議をして、民主党としての今後の方向性を、この代表選の中で明確にしてもらいたい。が、菅氏が勝てば、小沢氏は今まで通りガミガミ文句を言っては圧力をかける、こんなことは、もう既に見え見えに想像が可能だ。小沢氏が勝てば、小沢流に従えない議員はどうすればいいのか。
やはり、党を二分するのが賢明なのではないか。
兎に角、菅首相は死んだ魚のような目を再びギンギラギンと輝かして、小沢前幹事長については、今は政治とカネの問題は百歩二百歩譲るから、自らの政策を明確に掲げて、政策論議を尽くしてもらいたい。立候補する権利は民主党の議員ならば誰にでもあるのですから、でも、でも、だ、政治とカネの問題についてはきちんと説明しなければアカンですよ。
昨今の民主党の代表選についての朝日新聞の記事を読んで、今後を見極めましょう。
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20100827
朝日・朝刊
小沢氏は「表の政治」に徹せよ
編集委員・星 浩
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菅直人氏と小沢一郎氏。東京選出・市民運動出身と岩手選出・自民党田中派出身。民主党代表選は、党内の二大潮流を代表する2人の激突となる。国家感や政策、党運営で際だった違いを見せる2人の対決は最近の政界では珍しい刺激的なものとなるだろう。
ただ、論戦に入る条件がある。まず、小沢氏。政治資金疑惑で秘書経験者3人が起訴されている。彼らは自分の政治資金を集めたのではなく、小沢氏の資金集めで虚偽記載に問われたのだ。小沢氏は自身の関与も含め、国会で一言も説明しないまま約3ヶ月前に幹事長職を引責辞任した。小沢氏が代表選に手を挙げること自体、大いに疑問はあるが、あえて出馬するのなら、疑惑について反省し、十分な説明をする必要がある。
小沢氏周辺から聞こえてくるのが「首相・代表分離論」だ。小沢氏が代表になった場合でも、国会での追及などを避けるために別な人物を首相に担ぎ、小沢氏は裏から政権をコントロールしようというのだ。それは透明性を看板にしてきた民主党政治の死を意味する。代表選を機に小沢氏は「表の政治」に徹し、資金疑惑を含めて菅氏と論争を繰り広げなければならない。それができないなら、首相を目指す資格はない。
そして、菅氏。「昔のようにとんがったところがなくなった」と、本人も認めているがここは奮起して政治とカネの問題などで厳しく小沢氏を攻めてはどうか。消費税率の引き上げも引っ込めずに、小沢氏と正面から財政論争をしてみればよい。「政権交代すれば財源はいくらでも出てくる」と言い放ってきた小沢氏の反論が見ものだ。
政権交代から1年。この間の民主党政治は事業仕分けなどで成果を上げた反面、失望させられたことも多かった。最近の出来事では「軽井沢の空騒ぎ」がひどかった。
鳩山氏の広大な別荘で、地ビールを片手に「気合だ」と叫ぶ小沢氏支持の議員たち。景気低迷と猛暑にあえぐ多くの国民には「能天気」と映ったに違いない。与党にいるうちに「政権交代の初心」が磨耗してしまったのだろう。
鳩山氏は退陣後、いったんは「首相を辞任したら政治家も辞める」と明言したはずなのに、いつの間にか復活し、菅、小沢両氏の「調停役」を気取っている。失政の反省はないのだろうか。「気合だ」の議員ともども、頭を冷やせと言いたい。
小沢氏の出馬表明直後、10人の民主党議員に電話した。「正々堂々と決着つけるのは良いこと」と口をそろえながらも声がうわずっているのが分る。代表選後には、ねじれ国会の攻防が待ち受け、場合によっては民主党分裂につながるかもしれないと心配しているのだろう。
両雄激突の代表選は再生の第一歩か。民主党の、そして日本政治の岐路である。
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20100827
朝日・朝刊
社説/小沢氏出馬へ
あいた口がふさがらない
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どうしてここまで民意とかけはなれたことができるのか。多くの国民が、あぜんとしているに違いない。
民主党の小沢一郎前幹事長が、党代表選に立候補する意向を表明した。
政治とカネの問題で、「責任を痛感した」と、幹事長を辞して3ヶ月もたっていない。この間、小沢氏は問題にけじめをつけたのか。答えは否である。
いまだ国会で説明もせず、検察審査会で起訴相当の議決を受け、2度目の議決を待つ立場にある。
鳩山由紀夫前首相にも、あきれる。小沢氏率いる自由党との合併の経緯から、この代表選で小沢氏を支持することが「大義だ」と語った。「互いに責めを果たす」とダブル辞任したことを、もう忘れたのか。
二人のこのありさまは非常識を通り越して、こっけいですらある。
民主党代表はすなわち首相である。党内の多数工作に成功し、「小沢政権」が誕生しても、世論の支持のない政権運営は困難を極めるだろう。
党内でさえ視線は厳しい。憲法の規定で、国務大臣は在任中、首相が同意しない限り訴追されない。このため「起訴逃れ」を狙った立候補ではないかという批判が出るほどだ。政治とカネの問題をあいまいにしたままでは、国会運営も行き詰るに違いない。
より重大な問題も指摘しなければならない。
自民党は小泉政権後、総選挙を経ずに1年交代で首相を3人も取りかえた。それを厳しく批判して政権交代に結びつけたのは、民主党である。
今回、もし小沢首相が誕生すれば、わずか約1年で3人目の首相となる。「政権たらい回し」批判はいよいよ民主党に跳ね返ってくるだろう。より悪質なのはどちらか。有権者にどう申し開きをするのか。
それとも小沢氏は代表選に勝っても負けても、党分裂といった荒業もいとわずに大がかりな政治再編を仕掛けようとしているのだろうか。
金権腐敗政治と決別し、2大政党による政権交代のある政治、有権者が直接政権を選ぶ政治を実現するーーーーー。そんな政治改革の動きの中心に、小沢、鳩山両氏はいた。20年余の歳月を費やし、ようやく目標を達成したと思ったら、同じ二人がそれを台無しにしかねないことをしようとしている。
ほぼ1年前、新しい政治が始まることを期待して有権者は一票を投じた。その思いを踏みにじるにもほどがあるのではないか。しょせん民主党も同じ穴のむじな、古い政治の体現者だったかーーー。政党政治自体への冷笑がさらに深まっては取り返しがつかない。
代表選をそんな場にしてはならない。有権者は政権交代に何を託したのか、根本から論じ直し、古い政治を乗り越える機会にしなければならない。
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20100828
朝日・朝刊
社説/政策を競うのでなければ
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民主党の代表選は、再選を目指す菅直人首相と、「復権」に執念を見せる小沢一郎前幹事長との前面対決の構図となった。
政治とカネの問題にけじめをつけていない小沢氏に、首相を目指す資格があるとは言い難い。民意を問うことなく、首相をまた交代させようとする企てが正当とは到底いえない。
しかしながら、小沢氏が人事で裏取引して立候補を見送ったり、傀儡の候補者を立てたりすることに比べれば、表舞台で正面から戦う方がまだしも、ましかも知れない。有権者とすれば、せめてそう考えてこの代表選を見つめるほかない。
対決とはいえ、むき出しの権力闘争に堕するなら願い下げである。
昨年の総選挙マニフェストを見直すのか否か、消費税論議に踏み出すのか否か。菅、小沢両氏は、民主党内にある二つの潮流をそれぞれ代表する。
権力を得て、どんな政治を、政策を実現したいのか。双方が明確に示し、論戦を繰り広げ、黒白をつける機会にしなければならない。
小沢氏はいまだ政治資金問題への対応を明らかにしていない。政権構想もこれからだ。わずか1年で2回目の首相交代を迫る以上、自分が首相になればそのマイナスを補って余りあるプラスがあると説得しなければならない。
右肩上がりの成長の時代が終わり、政治の役割は果実の配分から「痛み」の配分に移ったとも言われる。政治指導者には、「あてかこれか」を選び、負担増になる人びとには丁寧に説明し、納得を得る努力が求められる。
「相談しない、相談しない、説得しない」とも言われる小沢流が、今の時代にふさわしいか。小沢氏には、その政治手法の総括も求められよう。
菅首相は参院選で、総選挙マニフェストの見直しと消費税論議を提起した。厳しい財政事情を直視すれば理にかなった主張である。参院選敗北後、代表選をにらんで言をあいまいにしてきたが、もはや封印する理由はない。
対する小沢氏は、あくまでマニフェストの実現を目指すというなら、その財源を具体的に示さなければいけない。消費税論議を当面棚上げするのなら、それに代わる日本の財政健全化の道筋を示す責任もある。
普天間問題を含む外交・安全保障政策や、ねじれ国会への対応についても、この際、徹底した論戦を通じて、党の意思統一を図る必要がある。
党内にさまざまな考え方があっても、これまでは「政権交代」という一点で結集ができた。しかし、それが実現したいま、改めて民主党は何を目指す政党なのかが問われている。
「小沢か、脱小沢か」の主導権争いだけにうつつを抜かしていたら、国民の気持ちは離れるだろう。