作品=老人と犬 -RED-
著者=ジャック・ケチャップ
発行=扶桑社
訳者=金子浩
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友人が、君は確か犬好きだったよな、これを読んでごらんよ、恐いよ、と言われてこの本を手渡された。こんなに新しい本に最近触れたことがない。表紙が白くて、清潔で綺麗だ。これを、買ったの?と聞いたら、君が得意な何とかオフの105円コーナーでは売ってないよ、買うしかなかったんだ。
あなたは犬好きらしいね。好きなら、好きで、どのぐらい好きですか?
唐突に変な質問してすみません。何でそんなことを聞くのかと言うと、この本の主人公のジジイほど犬を愛する人間を、私は今まで会ったことがないので、これは単に本の中だけの話か、それとも、あなたの傍に、これ以上の人が実在するならば、お聞かせ願いたいと思う。あなたも犬好きを任じるならば、先ずはこの本を読んでみてください。
物語は、老人と犬が不幸で悲惨な出来事に襲われるところから始まる。
ここからは、中原昌也氏の本のカバーに書かれている文章を紹介させてもらう。ーーーーーーー老人が愛犬と共に川釣りを楽しんでいる。そこへ少年三人が近づいて来た。中の一人は真新しいショットガンを担いでいる。その少年が老人に二言三言話しかけたかと思うと、いきなり銃口を老人に向け金を出せと脅かした。老人がはした金しか持っていないと判るや、その少年は突然、銃を犬に向けて発砲し、頭を吹き飛ばした。愛犬の亡骸を前に呆然と立ち尽くす老人。笑いながらその場を立ち去っていく少年たち。あまりにも理不尽な暴力!老人は”然るべき裁き”を求めて行動を開始するーーーーーー。
少年らの父は、なり上がりの不動産屋だ。少年の家族らによるジジイの店への攻撃は過激になる、果ては放火によって焼失させられる。物語はだんだんと、あなたの眠っている狂気を目覚めさせる。その狂気、始めは快感を伴って、そして修羅の場へ、生死の狭間、そして凄惨な結末だ。
クライマックスはやはり最終幕だ。大団円、ジジイは深傷を負って血だらけになった高倉健が一人で敵の本丸にドス一丁で切り込む、こんな幕引きの主人公のように。仁侠映画か?。西部劇での荒野の決闘風か。ダイハードシリーズ?か。今なら、この最後の残酷なシーンは、香港映画が得意とするもののような気もする。
愛犬の恨みを晴らすまでは、ジジイはどこまでも不滅だ。
ジジイの悲しみを、作者はかくも巨大に爆発させてみせた。そのジジイの生き様を、この本では息もつかせぬ迫力で、読者を読むことに疾走させる。私は一気に読んでしまった。
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